トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「どうしたんですか、そんなところで」
「クロエこそどうしたの? 貴女、殿下の主治医よね……?」
「その殿下から、マーセルの様子を見に行くように言われたので……身体の調子はどうですか?」
マティス殿下ったら、心配性なのね。知らなかったわ。彼、そんなに優しいところもあったのね。
……いいえ、おそらく彼が優しいのは『マーセル』にだけなのでしょう。特別なのね、彼にとって彼女は。
そう考えても、胸がちっとも痛まないから、やっぱりわたくし……マティス殿下のことが好きではなかったのね、と改めて感じてしまったわ。
「すこぶる元気よ。ああ、でも……マティス殿下からのお誘いは全部断るつもりよ。二人きりになるつもりはないの」
「……そう、ですね」
マーセルがマティス殿下の隣に立てるようにするには、まずこの関係をきちんとしなくてはいけないでしょう。わたくしからマティス殿下に婚約を白紙にするように提案してみようかしら。クロエに立ち会ってもらうのも良いかもしれないわね。
「ねえ、クロエ。知っていた? 『マーセル』が嫌がらせを受けていたこと」
クロエは黙った。沈黙は肯定とよく言うわよね。……知っていたのね。
別に責めるつもりはないのよ。彼女はマティス殿下の主治医としてこの学園に来ているのだから、学生同士のいざこざに巻き込むつもりはないもの。
「クロエこそどうしたの? 貴女、殿下の主治医よね……?」
「その殿下から、マーセルの様子を見に行くように言われたので……身体の調子はどうですか?」
マティス殿下ったら、心配性なのね。知らなかったわ。彼、そんなに優しいところもあったのね。
……いいえ、おそらく彼が優しいのは『マーセル』にだけなのでしょう。特別なのね、彼にとって彼女は。
そう考えても、胸がちっとも痛まないから、やっぱりわたくし……マティス殿下のことが好きではなかったのね、と改めて感じてしまったわ。
「すこぶる元気よ。ああ、でも……マティス殿下からのお誘いは全部断るつもりよ。二人きりになるつもりはないの」
「……そう、ですね」
マーセルがマティス殿下の隣に立てるようにするには、まずこの関係をきちんとしなくてはいけないでしょう。わたくしからマティス殿下に婚約を白紙にするように提案してみようかしら。クロエに立ち会ってもらうのも良いかもしれないわね。
「ねえ、クロエ。知っていた? 『マーセル』が嫌がらせを受けていたこと」
クロエは黙った。沈黙は肯定とよく言うわよね。……知っていたのね。
別に責めるつもりはないのよ。彼女はマティス殿下の主治医としてこの学園に来ているのだから、学生同士のいざこざに巻き込むつもりはないもの。