トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
 花壇の前でわたくしたちは別れた。クロエはきっと、マティス殿下にうまいことを言ってくれるでしょう。

 ――『わたくし』を心配してくれる人がいるって、なんだかすごく嬉しいわ。

 心が温かくなるのを感じて、わたくしは小さく笑みを浮かべた。

 次の授業は歴史だった。召使学科とはいえ、こういう教科は普通にあるのよね。主人以上に詳しくしないといけないときもある、ということかしら?

「それでは、千十二年、ホーマ地方であった内乱は何年続いたでしょうか?」

 あら、今ここをやっているのね。懐かしいわ。

 千十二年、ホーマ地方の内乱は五十年も続いた。その間に犠牲になった人は五百人。だけど、その五百人の中に、首謀者と貴族も入っている。

 貴族が悪政を行い、耐えきれなくなった領民が起こした内乱だ。結局、その地は誰も住めないくらい枯れた土地になってしまった。

 その首謀者の息子が初代陛下と言われているのよね。本当かどうかはわからないけれど……歴史はよく捻じ曲げられるから。

 貴族は領地と領民を守る。平民は税金を支払うことで、飢饉(ききん)とか災害のときに貴族に助けてもらう。もちろん、すべての貴族がそういうわけではないけれど……この国は貴族主義のところがあるから、平民は生きていくのが大変かもしれない。
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