トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
屋上で。
「……では、きみは誰なんだい? いや、待てよ……まさか、カミラ嬢?」
「正解。良くわかりましたね」
「魔術師学科の天才のことはよく聞こえてくるからね。その天才が調子を崩したと聞いて、おかしいとは思っていたんだ」
魔術師学科の天才……天才、ねぇ。わたくしが実技も教科も一位を誰にも譲らなかったから、そんなふうに言われるようになったのよね、きっと。
……わたくしがずっと一位を譲らなかったのは、家族に褒めてもらうためだった。
褒めてもらったことなんて、一度もないけれど……
「魂がトレードされたってことかい?」
「恐らくは」
「……戻りたくないの?」
「戻る前に、やることがありますの」
やることって? と聞かれたので、わたくしはマティス殿下との婚約を白紙にすること、マーセルがマティス殿下の婚約者になること、そのために彼女の評判を上げること。指折り数えて伝えるとレグルスさまは「ん……?」と複雑そうな顔をした。
「それって、きみの評判は落ちるだけなんじゃ?」
「構いませんわ。公爵家に戻ることも、考えていませんから」
平民として生きていくのも、きっと公爵家の令嬢と生きていくよりは楽しいでしょう。わたくしがそう口にすると、彼は少し悩むように顎に手をかけて、それから真剣な表情でこちらを見つめる。
「では、南の国に興味はないかい?」
「え?」
悪戯っぽく微笑むレグルスさま。その瞳はとても優しくて、首をかしげる。クロエは息を呑んで、「ま、まさか……」とつぶやいた。
「ぜひ、俺の妃になってほしい」
「正解。良くわかりましたね」
「魔術師学科の天才のことはよく聞こえてくるからね。その天才が調子を崩したと聞いて、おかしいとは思っていたんだ」
魔術師学科の天才……天才、ねぇ。わたくしが実技も教科も一位を誰にも譲らなかったから、そんなふうに言われるようになったのよね、きっと。
……わたくしがずっと一位を譲らなかったのは、家族に褒めてもらうためだった。
褒めてもらったことなんて、一度もないけれど……
「魂がトレードされたってことかい?」
「恐らくは」
「……戻りたくないの?」
「戻る前に、やることがありますの」
やることって? と聞かれたので、わたくしはマティス殿下との婚約を白紙にすること、マーセルがマティス殿下の婚約者になること、そのために彼女の評判を上げること。指折り数えて伝えるとレグルスさまは「ん……?」と複雑そうな顔をした。
「それって、きみの評判は落ちるだけなんじゃ?」
「構いませんわ。公爵家に戻ることも、考えていませんから」
平民として生きていくのも、きっと公爵家の令嬢と生きていくよりは楽しいでしょう。わたくしがそう口にすると、彼は少し悩むように顎に手をかけて、それから真剣な表情でこちらを見つめる。
「では、南の国に興味はないかい?」
「え?」
悪戯っぽく微笑むレグルスさま。その瞳はとても優しくて、首をかしげる。クロエは息を呑んで、「ま、まさか……」とつぶやいた。
「ぜひ、俺の妃になってほしい」