トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「……私、カミラさまは完璧な公爵令嬢だと思っていました。お金持ちで頭もよくて魔法も使えて……こんな人になれたらなぁって。カミラさまと婚約しているマティスさまにも、最初は興味本位で近付きました……」
ぽつぽつと言葉を落とすマーセルに、わたくしはただ手を動かしていた。髪を梳き終え、彼女の隣に座るとじっとこちらを見て「泣いていたんですか?」とストレートに聞かれた。目が腫れぼったくなっていることに気付いたみたいね。
「……貴女にも関係あることを聞いたのよ。それはあとで話すとして……貴女の家とは、やっぱり違うのね?」
こくりとうなずいたマーセル。どうやら彼女は家族に愛されて育ったようね。それが少し、いえ、かなり羨ましく感じた。
「両親は私を大切に育ててくれました。私の家はお金があるわけではありませんが、優しい両親に使用人たちがいて、いつも楽しかったです」
「……そう」
「私……ずっと、家族とはそういうものだと思っていました……」
ぽつぽつと話すマーセルに、わたくしは内心ため息を吐いた。
幸せな家庭で育った彼女が羨ましく、昨日のマティスの話を思い出してやるせない気持ちになる。
もしも、わたくしとマーセルが交換されなかったら、両親に愛されていたのかしら……?
そして、彼女が公爵家で育ったのなら、どんな令嬢になるのかと。
「……貴女は幸せな家庭で育ったのね」
こくり、とマーセルがうなずいた。
ぽつぽつと言葉を落とすマーセルに、わたくしはただ手を動かしていた。髪を梳き終え、彼女の隣に座るとじっとこちらを見て「泣いていたんですか?」とストレートに聞かれた。目が腫れぼったくなっていることに気付いたみたいね。
「……貴女にも関係あることを聞いたのよ。それはあとで話すとして……貴女の家とは、やっぱり違うのね?」
こくりとうなずいたマーセル。どうやら彼女は家族に愛されて育ったようね。それが少し、いえ、かなり羨ましく感じた。
「両親は私を大切に育ててくれました。私の家はお金があるわけではありませんが、優しい両親に使用人たちがいて、いつも楽しかったです」
「……そう」
「私……ずっと、家族とはそういうものだと思っていました……」
ぽつぽつと話すマーセルに、わたくしは内心ため息を吐いた。
幸せな家庭で育った彼女が羨ましく、昨日のマティスの話を思い出してやるせない気持ちになる。
もしも、わたくしとマーセルが交換されなかったら、両親に愛されていたのかしら……?
そして、彼女が公爵家で育ったのなら、どんな令嬢になるのかと。
「……貴女は幸せな家庭で育ったのね」
こくり、とマーセルがうなずいた。