528ヘルツの奇跡

01・イルカになりたい

 息が出来なくなる事がある。

 それは、本当に呼吸が止まるわけではなく、突然冷たい水の中にどぼんと落ちてしまったような息苦しさを感じるだけだけど。

 深いふかい海の中へ、どぼんと。

 その時、言いたい言葉やわかってほしい気持ちは喉の奥で石のような固まりになってぎゅっと詰まってしまい、それがじゃまをして声が出せない。何もなにも吐き出せなくなる。

 辛い、苦しい……早く地上へ出たいよ。

 水面に出て大きく息が吸えたら、きっとその苦しさもなくなるのに。

 だけど、それは叶わない。

 水の中にいるイルカやクジラたちも、地上へ上がれば話したい事、たくさんあるのかな。だから空気を吸いに水面へ出るのかな。

 でも、そういえば聞いた事がある。イルカは150ヘルツ、クジラは39ヘルツ。それくらいの音を水の中で発して仲間とコミュニケーションをとってるんだって。キューキュー鳴いてるイルカの声をテレビで聴いた事がある。あれでちゃんとコミュニケーションがとれるなんてビックリ。

 ……いいな、私もイルカになりたい。





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