528ヘルツの奇跡
 確認すると、ひとりは『きらりん☆』……これは絶対に剛里希星だ。きらりん☆のホームを見てみたら、彼女らしきプロフィールが書いてあった。写真もいくつか投稿されてるけど顔に加工されてた。でも背恰好を見る限りたぶん間違いない。

 もうひとりは『空芯菜』……空芯菜(くうしんさい)って、野菜の名前だよね? 中華料理とかで使われてるやつ。私はあまり食べないけど、お母さんが炒めたの好きで、中華料理屋さん行くとよく頼んでる。

 『空芯菜』のホームを見てみたけど、なんにも書いてない。動画を見る為だけのアカウント作ってる人いるから、それかもしれないけど……

 こんな、再生数一桁しかないようなアカウントフォローする?

 目的が分からない。もしかしたら剛里希星の仲間で、私のイジメ用に作ったのかもしれない。

 でもなんだか気になって、もう暫く『ヨム』のアカウントはそのまま残す事にした。それに、急に消したら剛里希星にまた何か言われるかもしれないし。





◇◇◇

 次の日登校すると、教室で剛里希星が私の席へ飛んできた。ニヤニヤ含み笑いの取り巻きを引き連れていたので、また何かあるなと身構えた。

「ねえねえ森さん! もう教室の掲示板見た? 凄いよ!」

「掲示板……?」

 剛里さんの言う『掲示板』は、教室の後ろの壁にある。学級通信や連絡事項を貼る為のもの。テストの期間は範囲や時間割が貼られるから見るけど、普段はあまり確認しない。クラスのみんなもそんな感じだ。

 剛里さんに促されるまま、掲示板を見に行った。

「え……?! なに、これ……」

 貼られていたのは今日新しく貼られた学級通信。そしてそこに、私の名前が載っていた。

「ろ、朗読コンテスト? ……って、私こんなの申し込んでない……」
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