528ヘルツの奇跡
「なんか……勝手に、申し込まれちゃって……」
さっきの事を思い出して、また胸が苦しくなる。膝の上に置いていた両手をギュッと握りしめた。
「あと、ヨムって……」
「それは……」
私は答えられずに自分の手を見つめていた。
「もしかしてヨムって、SNSで朗読動画やってるやつ?」
それも聞こえちゃってたんだ……やっぱりアカウント消さなきゃ。クラス中にバレる前に。
「……俺、ヨムの朗読、聞いてる」
思いもよらない言葉に驚いて、顔を上げた。
「この前偶然見つけて、朗読を聞いてみたら良かったからフォローしたんだけど。さっき剛里の話に出てきて驚いた」
馬鹿にするでもなく、淡々とそう話す朔間くん。フォローしたって言ってたけど、もしかして……
「『空芯菜』……?」
「それ、俺のアカウント」
はにかむように彼は笑った。
フォロワーの空芯菜……あれは、朔間くんだったんだ。
「……森さんは、もっと自分の声に自信を持ったほうがいいと思う」
自信、持てるものなら持ちたい。でも……
じっと見つめてくる朔間くんの視線から逃げるように、私はまた俯いてしまった。
しんと静まった保健室。朝のホームルームが始まるチャイムが鳴った。そろそろ教室に戻った方がいいのかもしれない。せめて朔間くんだけでも。
「朗読コンテスト、出なきゃならないんだったら、俺が協力する」
「え……?」
「さっき言ったけど『ヨム』の朗読、俺は好きだ。森さんは印象に残る声だし、才能あると思う」
そんな事言われたのは初めてだった。いつもと違う恥ずかしさで心臓がドキドキする。なんで? 何が起きてるの?
「たまには、剛里たちに反撃してやってもいいんじゃないか?」
さっきの事を思い出して、また胸が苦しくなる。膝の上に置いていた両手をギュッと握りしめた。
「あと、ヨムって……」
「それは……」
私は答えられずに自分の手を見つめていた。
「もしかしてヨムって、SNSで朗読動画やってるやつ?」
それも聞こえちゃってたんだ……やっぱりアカウント消さなきゃ。クラス中にバレる前に。
「……俺、ヨムの朗読、聞いてる」
思いもよらない言葉に驚いて、顔を上げた。
「この前偶然見つけて、朗読を聞いてみたら良かったからフォローしたんだけど。さっき剛里の話に出てきて驚いた」
馬鹿にするでもなく、淡々とそう話す朔間くん。フォローしたって言ってたけど、もしかして……
「『空芯菜』……?」
「それ、俺のアカウント」
はにかむように彼は笑った。
フォロワーの空芯菜……あれは、朔間くんだったんだ。
「……森さんは、もっと自分の声に自信を持ったほうがいいと思う」
自信、持てるものなら持ちたい。でも……
じっと見つめてくる朔間くんの視線から逃げるように、私はまた俯いてしまった。
しんと静まった保健室。朝のホームルームが始まるチャイムが鳴った。そろそろ教室に戻った方がいいのかもしれない。せめて朔間くんだけでも。
「朗読コンテスト、出なきゃならないんだったら、俺が協力する」
「え……?」
「さっき言ったけど『ヨム』の朗読、俺は好きだ。森さんは印象に残る声だし、才能あると思う」
そんな事言われたのは初めてだった。いつもと違う恥ずかしさで心臓がドキドキする。なんで? 何が起きてるの?
「たまには、剛里たちに反撃してやってもいいんじゃないか?」