528ヘルツの奇跡
04・528ヘルツ
「――じゃあ、森の受け付けは済ませたから、先生は観覧席へ行ってるな。付き添い、頼むぞ、朔間」
「はい」
何かあったら呼んで、と言いながら引率で来ていた担任の先生は行ってしまった。私は蒼太くんと一緒に、出場者用の控室のすみっこでパイプイスに座り、全然治まらない心臓の音と戦っていた。
今日は、朗読コンテストの本選の日。
そんな日にどうして私たちが出場者用控室に居るのかと言うと、あろうことか予選を通ってしまったからだ。担任の先生に本選出場の五人に入ったと聞かされた時は、意味が分からなくて三回も聞き直してしまった。
子供部門の五人、中高生部門の五人、大人部門の五人。合計十五人が、この本選のステージで朗読を披露して順位を決めることになっている。
出場者一人につき付き添いが一人。引率の先生がそのまま付き添いになってる人も多い。控え室に約三十人がひしめき合っている。控え室の広さは十分だけど仕切りなんてないから、出場者同士よく見える。
みんな私より上手そう……
いまだに、どうして自分がここにいるのか分からない。何かの間違い何じゃないかと、今でも思ってる。
やる気と自信に満ち溢れた他の出場者に圧倒されてしまい、身体の震えが止まらない。座っている膝の上で、両手をギュッと握った。
「あー! やっぱりいた〜!」
突然、聞いた事のある甲高い声がした。見ると、そこにいたのは剛里希星。並んで男の人が立っているのは、きっと噂のお兄さん。顔がよく似てる。私を見てニヤニヤしてるから、私の事は剛里さんに話を聞いているんだろう。
お兄さんも本選に出場するんだ……
「森さん、予選通ったって担任に聞いたから探してたんだ〜! あたしは今日はお兄ちゃんの付き添い! だから控え室入れたの。でも……」