あの子はメルヘンチック


 天使からの好感度は今のどのくらいなのか。教えてほしい有識者の人。むりなら、好きな子からの好意を数値化する機械を作ってください。言い値で買います。


「えっ、急に真剣にデッサンし始めた……?」

「今更まじめアピール? 結弦くんよ、ほんとなにしてえの……?」


 カリカリカリ。画用紙に鉛筆を滑らす。

 どうにか挽回するためにデッサンに集中した俺は、持ち得る美的センスの有難みを感じながら、この世の魅力を全て詰め込んだ天使の絵を描いて無言で差し出した。


「うわ、クオリティえぐ。つうか、メルヘンちゃんの背中に羽生えてるし、頭に輪っかもあるし、すんごい神々しく描かれてんだけど……」

「わたしに、羽と輪っか……? え、あれ、付いてないよね?」

「ダイジョウブ、テンシ、カワイイ」

「目が全然合わないよ、どこ見てるの? え、ねえ、羽も輪っかも付いてないよね……??」

「カワイイ、ダイジョウブ、フワフワ」

「感情を知ったばかりのロボットか、お前は。怯えさすな」


 あ〜〜〜っ、かわいい、丸呑みにしたい。

 目をぱちくりさせて、困った顔で羽根と輪っかを探してる天使、可愛すぎて口に入れたい。口に含んでもぐもぐ堪能して、手のひらサイズにして持ち運びたい。

 この可愛さを宇宙まで届けたいし、反対に俺だけのものして閉じ込めたい。

 どこまでなら、許されるんだろ。


「あの、結弦くん。全部声に出てる」

「…………〜〜っ!? 俺の名前!? 結弦くん!?」

「えっ? うん、大路結弦くんだよね……?」

「そうです。僕は品行方正で一途な大路結弦くんですよろしくお願いします」

「ん? あ、姫井めるです? よろしくお願いします?」

「め、めめめめめ、めめめ、めめめめめるちゃっ、」

「ちょっと〝め〟が多いかな。1個で十分だよ。リピートアフターミー、める」

「―――〜〜ッ!?!? ……め、める!」

「よしよし、よく出来ました」


 あっ、あ、あばばばばばばばばばばっっっ!?!?

 あ、ああっ、あたまっ、あたま撫でられた! 今も撫でられてる! よしよし!? 天使に俺のあたまをよしよしされてる……!? ち、地球おわる!?

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