あの子はメルヘンチック
まずは、幼稚園。
この頃から容姿が完成されていた俺は、整った顔に加えて幼い子ども特有の愛らしさで周りをメロメロにした。同じクラスの女の子も先生も、近所のマダムも虜になって、それはそれは褒めちぎって甘やかした。
砂場で遊んでいた女の子に「そのおもちゃ貸してくれる?」とお願いすれば、顔を赤くした女児が「いいよお」と目をハートにして渡してくれる。
先生はお昼ご飯の時に苦手な食べ物があると「内緒だからね」と言いながら、勝手に食べてくれる。
お菓子が食べたくなったら、近所のマダムに「おやつある?」とあざとく聞くだけでお願いしてもないのに高級なお菓子を贈呈してくれる。
その他もろもろの出来事で、俺は5歳にして、この世の全ては自分中心に回ってるんだと調子に乗った。
次は、小学生。
要領の良さと器用な生き方は天賦の才だったのか、小学1年生にして大勝利を収めた。上級生からは可愛がられ、テストでも運動でも1番の俺は同級生からも羨望の眼差しを向けられる。
4年生になった時、適当に書いた習字が特選を取ってしまい、先生にも親にも褒められた。
5年生になった時、適当に書いた読書感想文で賞を貰い、同級生から褒められ、親には少し本性がバレた。
6年生になった時、無敵の王様だと椅子にふんぞりかえっても誰にも文句は言われないほどに、俺の評価は最高だった。
なにしても簡単で、つまんなくて、ちょろかった。