余命乙女と天邪鬼の恋病
馬車で町へと出掛けた静枝。
人通りの少ない場所を付き添いの使用人と歩く。
静枝は人間観察をしていた。
健康だった時には気付かないかったこと、見えてくるものがあった。
「お嬢様、申し訳ございません。奥様から頼まれていた物がございました…少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
「構わないわ」
「ありがとうございます!すぐ戻りますので動かないようお願いします。具合が悪くなりましたら…」
「わかってるわ」
心配性な使用人に苦笑しつつも気持ちはありがたかった。
待っている間、ふと路地に目を向けると小さな男の子が座り込んでいた。
「ご家族とはぐれたのかしら?」
使用人からは動くなと言われたばかりだが、すぐ近くなら平気だろうと静枝は男の子に近づき声を掛けた。
「どうしたの?」
静枝の声に気づき、小さく塞ぎこんで見えなかった顔向ける男の子。
男の子は10歳もいかないくらいで着物はボロボロで無数の怪我をしていた。
「…お姉さん誰?」
「私は尾上静枝。ただの通りすがりよ」
名乗ることで怪しい人間ではないと警戒している男の子に伝える。
男の子はじぃ〜と静枝を見つめている。
「傷口にお薬塗らせてくれるかな?」
持っていた巾着から塗り薬を見せると男の子はコクッと頷く。
「……っ」
「男の子なんだから我慢しようね。頑張ったらご褒美あげるから」
「ご褒美?」
傷口に優しく塗ってあげたつもりだが男の子は痛そうにしつつも大人しく我慢してくれていた。
「よく頑張ったわね。お医者様に診ていただくのよ?」
自身の指についた薬を拭いてから巾着からあるものを男の子に差し出す。
「はい、ご褒美。金平糖よ」
「こん…ぺいとう?何それ?」
「甘くて美味しくて元気がでる不思議な菓子」
金平糖は初めて見るのだろうかと金平糖を一粒摘み、口に入れて変な物じゃないよと。
美味しそうに食べる静枝に欲しくなったのか手を伸ばす男の子。
男の子に金平糖の入った袋を渡すと1粒口に入れ頬張る。
(警戒してたのに…笑ってくれた)
「静枝!ありがとな!」
男の子は立ち上がり駆け出した。
突然走り出したのでびっくりしたが元気になったのなら良かったと思うことにした。
だが、男の子はすぐ戻って来た。
「僕、桃矢!!またな!」
桃矢と名乗りまたすぐ走っていってしまった。
手を振る静枝。
家族らしい人はいなかったが大丈夫だろうかと心配していると「お嬢様!動かぬようにとあれほど…!」
使用人が慌ててやってくる。
自分が心配されてしまった。
人通りの少ない場所を付き添いの使用人と歩く。
静枝は人間観察をしていた。
健康だった時には気付かないかったこと、見えてくるものがあった。
「お嬢様、申し訳ございません。奥様から頼まれていた物がございました…少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
「構わないわ」
「ありがとうございます!すぐ戻りますので動かないようお願いします。具合が悪くなりましたら…」
「わかってるわ」
心配性な使用人に苦笑しつつも気持ちはありがたかった。
待っている間、ふと路地に目を向けると小さな男の子が座り込んでいた。
「ご家族とはぐれたのかしら?」
使用人からは動くなと言われたばかりだが、すぐ近くなら平気だろうと静枝は男の子に近づき声を掛けた。
「どうしたの?」
静枝の声に気づき、小さく塞ぎこんで見えなかった顔向ける男の子。
男の子は10歳もいかないくらいで着物はボロボロで無数の怪我をしていた。
「…お姉さん誰?」
「私は尾上静枝。ただの通りすがりよ」
名乗ることで怪しい人間ではないと警戒している男の子に伝える。
男の子はじぃ〜と静枝を見つめている。
「傷口にお薬塗らせてくれるかな?」
持っていた巾着から塗り薬を見せると男の子はコクッと頷く。
「……っ」
「男の子なんだから我慢しようね。頑張ったらご褒美あげるから」
「ご褒美?」
傷口に優しく塗ってあげたつもりだが男の子は痛そうにしつつも大人しく我慢してくれていた。
「よく頑張ったわね。お医者様に診ていただくのよ?」
自身の指についた薬を拭いてから巾着からあるものを男の子に差し出す。
「はい、ご褒美。金平糖よ」
「こん…ぺいとう?何それ?」
「甘くて美味しくて元気がでる不思議な菓子」
金平糖は初めて見るのだろうかと金平糖を一粒摘み、口に入れて変な物じゃないよと。
美味しそうに食べる静枝に欲しくなったのか手を伸ばす男の子。
男の子に金平糖の入った袋を渡すと1粒口に入れ頬張る。
(警戒してたのに…笑ってくれた)
「静枝!ありがとな!」
男の子は立ち上がり駆け出した。
突然走り出したのでびっくりしたが元気になったのなら良かったと思うことにした。
だが、男の子はすぐ戻って来た。
「僕、桃矢!!またな!」
桃矢と名乗りまたすぐ走っていってしまった。
手を振る静枝。
家族らしい人はいなかったが大丈夫だろうかと心配していると「お嬢様!動かぬようにとあれほど…!」
使用人が慌ててやってくる。
自分が心配されてしまった。