王子様との両片想いな闇落ち学園生活 〜封印される記憶〜
「私に絶望を与えるためよね」
「ああ、そのとおりだ。君が他の男を好きになったら、ここでの記憶を君に返す。そうすれば、僕以外と結ばれることなんてできないと知るだろう。ここまで僕に許した記憶があるんじゃね」
「……許した覚えはないけど」
「でも、もう諦めて受け入れている。君に記憶を返してしまえば僕を嫌いな君しかいなくなってしまうけど、他の男と恋愛をしようとは考えられないだろう」
「さすがにこの婚約は覆らないでしょう」
「当然だ。でも、浮気しないとは限らない。君の言うママゴトみたいな恋愛を違う奴としてしまうかもしれない」
どうしてこんなに自信がないのか。
それは、生まれ持った才能が凡庸だからだろう。何をしても人並み。だからこそ人一倍努力していることも知っている。彼がこの学園に入ってから、テストも記述問題が増えたようだ。努力をしてもトップには立てない。だからこそ記述問題で点数差をつけて、わざわざ一位にされているとここで愚痴っていた。
その程度の考慮だけで上にいけるのだから、彼の努力も並大抵ではないものの……完璧な王子でありたい彼は実は落ち込んでいる。
「ここでの記憶をもつ私なら、薄汚れていてママゴトみたいな恋愛は誰ともできないって?」
「ああ、汚れてくれてありがとう。嫌いな男と添い遂げなければならない気分はどうだ?」
本当にクズね。
「あんたなんて、地獄に落ちればいいのに」
私の不敬な言葉に嬉しそうに笑う。
「君の新たな一面が知れてよかったよ。嫌いな人間には嫌いだと言う性格のようだ。僕はまだ君に嫌われていない」
ややこしいわね。
昼間の私に嫌われなければそれでいいと。完全に今の私を「私」だと認識してくれていない。
悔しくて悔しくてたまらない。
「……とっとと、くたばればいいのに」
私も彼と同じだ。
卑怯な人間だ。
ここだけの限定で、昼間の私が嫌われないと分かっているから罵れる。口汚く罵ってすら昼間の私は愛されているのだと、後ろ暗い喜びに浸かりたい。
「……酷い男」
「ああ、酷いんだ」
乱れてやる。
昼間の私になんて考えもできないような、あられもない声で啼いてやる。
――この私からも、離れられないように。
「ああ、そのとおりだ。君が他の男を好きになったら、ここでの記憶を君に返す。そうすれば、僕以外と結ばれることなんてできないと知るだろう。ここまで僕に許した記憶があるんじゃね」
「……許した覚えはないけど」
「でも、もう諦めて受け入れている。君に記憶を返してしまえば僕を嫌いな君しかいなくなってしまうけど、他の男と恋愛をしようとは考えられないだろう」
「さすがにこの婚約は覆らないでしょう」
「当然だ。でも、浮気しないとは限らない。君の言うママゴトみたいな恋愛を違う奴としてしまうかもしれない」
どうしてこんなに自信がないのか。
それは、生まれ持った才能が凡庸だからだろう。何をしても人並み。だからこそ人一倍努力していることも知っている。彼がこの学園に入ってから、テストも記述問題が増えたようだ。努力をしてもトップには立てない。だからこそ記述問題で点数差をつけて、わざわざ一位にされているとここで愚痴っていた。
その程度の考慮だけで上にいけるのだから、彼の努力も並大抵ではないものの……完璧な王子でありたい彼は実は落ち込んでいる。
「ここでの記憶をもつ私なら、薄汚れていてママゴトみたいな恋愛は誰ともできないって?」
「ああ、汚れてくれてありがとう。嫌いな男と添い遂げなければならない気分はどうだ?」
本当にクズね。
「あんたなんて、地獄に落ちればいいのに」
私の不敬な言葉に嬉しそうに笑う。
「君の新たな一面が知れてよかったよ。嫌いな人間には嫌いだと言う性格のようだ。僕はまだ君に嫌われていない」
ややこしいわね。
昼間の私に嫌われなければそれでいいと。完全に今の私を「私」だと認識してくれていない。
悔しくて悔しくてたまらない。
「……とっとと、くたばればいいのに」
私も彼と同じだ。
卑怯な人間だ。
ここだけの限定で、昼間の私が嫌われないと分かっているから罵れる。口汚く罵ってすら昼間の私は愛されているのだと、後ろ暗い喜びに浸かりたい。
「……酷い男」
「ああ、酷いんだ」
乱れてやる。
昼間の私になんて考えもできないような、あられもない声で啼いてやる。
――この私からも、離れられないように。