〜Midnight Eden〜 episode4.【月影】
莉愛の自殺の原因は、ネットに流されたリベンジポルノとそれによる世間からの誹謗中傷だ。
交際相手の裸の写真や性交動画を相手に無断でインターネットに公開する行為をリベンジポルノと呼ぶ。
私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(通略はリベンジポルノ被害防止法、リベンジポルノ対策法)が2014年11月27日に施行され、2015年には違反者が逮捕、有罪判決も出ている。
莉愛の自殺の1週間前の3月14日に衝撃的な動画が匿名のネット掲示板に解き放たれた。1分足らずの短い動画には、複数の裸の男に囲まれて喘ぐ望月莉愛の姿が映っていた。
動画に映る莉愛の身体に群がる男は三人。全員が顔にモザイク加工がかけられ、表に出回る動画では莉愛を囲む三人の身元は特定できなかった。
警察は掲示板のプロバイダに発信者の情報開示を要請。突き止めた動画の発信者には、警視庁の応接室で寛ぐ伊吹大和と絞殺死体で発見された増山昇の名があった。
『今でも望月莉愛、動画、流出、関連ワードで検索するとネットに動画が流れてくるぞ。サイバー課が取り締まっても追い付かないみたいだ』
『リベンジポルノは一度ネットに流れたら永遠に消えないよな。こんなもので喜んで抜いてる男は同じ男として軽蔑する』
『同感』
犬猿の仲の南田と九条もこの事件においては意見が一致している。ネットは、人気アイドルの性交動画に喜んで飛び付く男達の狂気で溢れていた。
フルリールは恋愛禁止のグループだ。しかし恋愛禁止のルールは表向きのこと。
彼女達の恋愛スキャンダルはたびたび週刊誌に撮られている。メンバーの坂元凛々子と俳優の熱愛報道が出た昨年夏頃もファンの批判の嵐となり、凛々子は3ヶ月の謹慎処分を受けていた。
性交動画が流出した莉愛は世間からバッシングの刃《やいば》を向けられた。ネットを飛び交う鋭利な言葉の刃物はファンだけでなく、フルリールに興味関心のない人々からも放たれた。
「動画を流出させた伊吹達が悪いのはもちろんだけど、莉愛を自殺するまで追い詰めたのはネットの住民だね」
匿名掲示板の望月莉愛専用スレッドに書き込まれた暴言は、見るに耐えられない発言ばかりだ。美夜は回し読みしていたタブレット端末を九条に突っ返した。
『匿名を盾にして好き放題、誹謗中傷して自殺したら可哀想の手のひら返し。それが人間ってもんだ。気持ち悪いよな』
リベンジポルノによる辱《はずか》しめと誹謗中傷に堪えきれなくなった莉愛は、二十歳の誕生日を前に自ら命を絶った。
これが望月莉愛リベンジポルノ自殺の経緯だ。
「やっぱりあの伊吹だったか……」
物憂げな表情の小山真紀が捜査一課のフロアに姿を見せた。現場にも現れなかった真紀の顔を、美夜も九条も今日初めて目にする。
『主任。どこに行っていたんですか?』
「ちょっと特命対策室にね」
顔色の冴えない真紀はひどく疲れているようだ。彼女は応接室にいる伊吹大和をブラインド越しに見据えて溜息をついた。
「望月莉愛のリベンジポルノの動画、本当は集団強姦なのよ」
真紀が語ったリベンジポルノの真相は想像以上に陰湿だった。
交際相手の裸の写真や性交動画を相手に無断でインターネットに公開する行為をリベンジポルノと呼ぶ。
私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(通略はリベンジポルノ被害防止法、リベンジポルノ対策法)が2014年11月27日に施行され、2015年には違反者が逮捕、有罪判決も出ている。
莉愛の自殺の1週間前の3月14日に衝撃的な動画が匿名のネット掲示板に解き放たれた。1分足らずの短い動画には、複数の裸の男に囲まれて喘ぐ望月莉愛の姿が映っていた。
動画に映る莉愛の身体に群がる男は三人。全員が顔にモザイク加工がかけられ、表に出回る動画では莉愛を囲む三人の身元は特定できなかった。
警察は掲示板のプロバイダに発信者の情報開示を要請。突き止めた動画の発信者には、警視庁の応接室で寛ぐ伊吹大和と絞殺死体で発見された増山昇の名があった。
『今でも望月莉愛、動画、流出、関連ワードで検索するとネットに動画が流れてくるぞ。サイバー課が取り締まっても追い付かないみたいだ』
『リベンジポルノは一度ネットに流れたら永遠に消えないよな。こんなもので喜んで抜いてる男は同じ男として軽蔑する』
『同感』
犬猿の仲の南田と九条もこの事件においては意見が一致している。ネットは、人気アイドルの性交動画に喜んで飛び付く男達の狂気で溢れていた。
フルリールは恋愛禁止のグループだ。しかし恋愛禁止のルールは表向きのこと。
彼女達の恋愛スキャンダルはたびたび週刊誌に撮られている。メンバーの坂元凛々子と俳優の熱愛報道が出た昨年夏頃もファンの批判の嵐となり、凛々子は3ヶ月の謹慎処分を受けていた。
性交動画が流出した莉愛は世間からバッシングの刃《やいば》を向けられた。ネットを飛び交う鋭利な言葉の刃物はファンだけでなく、フルリールに興味関心のない人々からも放たれた。
「動画を流出させた伊吹達が悪いのはもちろんだけど、莉愛を自殺するまで追い詰めたのはネットの住民だね」
匿名掲示板の望月莉愛専用スレッドに書き込まれた暴言は、見るに耐えられない発言ばかりだ。美夜は回し読みしていたタブレット端末を九条に突っ返した。
『匿名を盾にして好き放題、誹謗中傷して自殺したら可哀想の手のひら返し。それが人間ってもんだ。気持ち悪いよな』
リベンジポルノによる辱《はずか》しめと誹謗中傷に堪えきれなくなった莉愛は、二十歳の誕生日を前に自ら命を絶った。
これが望月莉愛リベンジポルノ自殺の経緯だ。
「やっぱりあの伊吹だったか……」
物憂げな表情の小山真紀が捜査一課のフロアに姿を見せた。現場にも現れなかった真紀の顔を、美夜も九条も今日初めて目にする。
『主任。どこに行っていたんですか?』
「ちょっと特命対策室にね」
顔色の冴えない真紀はひどく疲れているようだ。彼女は応接室にいる伊吹大和をブラインド越しに見据えて溜息をついた。
「望月莉愛のリベンジポルノの動画、本当は集団強姦なのよ」
真紀が語ったリベンジポルノの真相は想像以上に陰湿だった。