〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
無言の傍観者の挙動を美夜は一瞬足りとも逃さず視界に捕らえ続ける。締めきったカーテンの窓際には、河原水穂が暗に名指しした“あの子”が立っていた。
「雪枝ちゃんは利用されてる。河原水穂は私にそう言った。雪枝ちゃんの舞ちゃんへの復讐心を利用したのは宮島知佳、あなたなの?」
「……あんた、うざったいなぁ。あんたみたいな頭良さそうな美人は、私が最悪に嫌いな人種なんだ」
無言の傍観者こと宮島知佳は舌打ちしをした後、この世の物事すべてを憎悪する眼差しで美夜を睨んだ。
「女子校をジャックすれば、発情した雄がめちゃくちゃやらかすだろうとは思ってた。雪枝には言わなかったけど、梶浦と吉井はここにいる皆の前で夏木舞をレイプして、その動画を晒せばいいと言ってたの。さすがにやりすぎだって滝本さんに止められていたけどね。私も、このお嬢様を椅子に縛り付けておくだけじゃ生ぬるいなぁって思ったよ?」
自爆覚悟の滝本も、女の尊厳を平気で踏みにじるほど人格は破綻していない。犯人グループの中でもリゾートホテル計画反対派メンバーにはまだ、ひと欠片の良心が残っていた。
B棟をジャックして、教師達をB棟内のカフェテリアで拘束していたペンション元経営者の新堂夫妻と喫茶店元経営者の安西は、カフェテリア内のウォーターサーバーの水を人質の教師達に飲ませ、トイレの要求にも応じていた。
リゾートホテル計画反対派メンバーが憎むべきは夏木十蔵と夏木コーポレーション。
人質一四〇〇人を爆破の道ずれにはしようとしたが、それも彼らの本意ではない。無関係な教師や生徒を、リゾートホテル計画反対派メンバーの彼らは傷付けていなかった。
その証拠に守衛を殺したのも強姦未遂を起こしたのもヤクザの端くれの梶浦と吉井、盗撮行為は夏木コーポレーション元社員の巻田、 その巻田は水穂が殺害した。
校内で何かしらの事件を起こした者達は全員、館山リゾートホテル計画とは無縁の者達だ。
明かされたショッキングな真実が雪枝の心に大粒の雨を降らせる。
「私は夏木さんにそこまでのことは……」
「だからあんたは世間知らずで甘いんだよ。復讐したいならそこまでやればいい。そこのお嬢様の身体と心が壊れようがどうでもいいじゃん? 私は壊してやりたかった。金持ちのお嬢様達が怯える顔を見たいから、私は計画に参加したのよ」
滝本達のやり場のない夏木十蔵に対する怒りや雪枝の復讐心にも、賛同はできずとも理解は示せる。水穂の言葉には雪枝への同情と罪悪感が滲んでいた。
しかし宮島知佳の殺気は、滝本達や雪枝、水穂とは全く別次元だと感じた。知佳には良心や躊躇いの感情は欠片もない。
誰かが苦しむ姿を見て面白がる。何がこの女を荒《すさ》ませている?
「雪枝ちゃんは利用されてる。河原水穂は私にそう言った。雪枝ちゃんの舞ちゃんへの復讐心を利用したのは宮島知佳、あなたなの?」
「……あんた、うざったいなぁ。あんたみたいな頭良さそうな美人は、私が最悪に嫌いな人種なんだ」
無言の傍観者こと宮島知佳は舌打ちしをした後、この世の物事すべてを憎悪する眼差しで美夜を睨んだ。
「女子校をジャックすれば、発情した雄がめちゃくちゃやらかすだろうとは思ってた。雪枝には言わなかったけど、梶浦と吉井はここにいる皆の前で夏木舞をレイプして、その動画を晒せばいいと言ってたの。さすがにやりすぎだって滝本さんに止められていたけどね。私も、このお嬢様を椅子に縛り付けておくだけじゃ生ぬるいなぁって思ったよ?」
自爆覚悟の滝本も、女の尊厳を平気で踏みにじるほど人格は破綻していない。犯人グループの中でもリゾートホテル計画反対派メンバーにはまだ、ひと欠片の良心が残っていた。
B棟をジャックして、教師達をB棟内のカフェテリアで拘束していたペンション元経営者の新堂夫妻と喫茶店元経営者の安西は、カフェテリア内のウォーターサーバーの水を人質の教師達に飲ませ、トイレの要求にも応じていた。
リゾートホテル計画反対派メンバーが憎むべきは夏木十蔵と夏木コーポレーション。
人質一四〇〇人を爆破の道ずれにはしようとしたが、それも彼らの本意ではない。無関係な教師や生徒を、リゾートホテル計画反対派メンバーの彼らは傷付けていなかった。
その証拠に守衛を殺したのも強姦未遂を起こしたのもヤクザの端くれの梶浦と吉井、盗撮行為は夏木コーポレーション元社員の巻田、 その巻田は水穂が殺害した。
校内で何かしらの事件を起こした者達は全員、館山リゾートホテル計画とは無縁の者達だ。
明かされたショッキングな真実が雪枝の心に大粒の雨を降らせる。
「私は夏木さんにそこまでのことは……」
「だからあんたは世間知らずで甘いんだよ。復讐したいならそこまでやればいい。そこのお嬢様の身体と心が壊れようがどうでもいいじゃん? 私は壊してやりたかった。金持ちのお嬢様達が怯える顔を見たいから、私は計画に参加したのよ」
滝本達のやり場のない夏木十蔵に対する怒りや雪枝の復讐心にも、賛同はできずとも理解は示せる。水穂の言葉には雪枝への同情と罪悪感が滲んでいた。
しかし宮島知佳の殺気は、滝本達や雪枝、水穂とは全く別次元だと感じた。知佳には良心や躊躇いの感情は欠片もない。
誰かが苦しむ姿を見て面白がる。何がこの女を荒《すさ》ませている?