〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
 まずはW主人公のメリーバッドエンドとも言えるラストシーン。美夜と愁の結末は初期プロットの段階で決定していました。

 刑事と殺し屋の逃避行の行き先は栃木県日光市。最期の場所を日光の中禅寺湖にした理由は私が想像したラストシーンに一番近い風景が中禅寺湖だったのです。
奥日光は12月でも降る時は結構な積雪になるらしく、最期の場所にぴったりでした❄️

湖畔にあるイタリア大使館別荘記念公園内のベンチを見つけた時はイメージ通りで感動しました。風景が気になる方はぜひ、栃木県のイタリア大使館別荘記念公園をネットで検索してみてください。

 刑事の美夜と殺し屋の愁の恋のイメージの根底にロミジュリはずっと存在していました。
ロミジュリは有名過ぎてロミオとジュリエットの関係や結末は説明不要ですね。細部のストーリーを詳しく知らなくても結末だけはご存知の方も多いと思います。

 死んだ後に魂で結ばれるなんて美夜も愁も信じてないけれど、どうせこの先に待つのは地獄だけ。

刑事の美夜が初めて殺した人は愁。
殺し屋の愁が最後に殺した人は美夜。
どうせ地獄に堕ちるなら永遠に二人で堕ちていよう。これが美夜と愁が出した結論です。

 美夜は左手の薬指に鈴蘭の指輪をつけていますし、愁も左手首に指輪の代わりになる手錠をつけています。指輪は愁から美夜へ、手錠は美夜から愁へ。
地面を覆う白銀の雪に落ちる赤色の血。これは二人きりの赤と白の結婚式。

夏目漱石の〈月が綺麗ですね〉は告白の言葉で有名ですよね。
心中の前日に愁が呟いた『明日の月は綺麗だろうな』(明日の月は綺麗でしょうね)には〈明日あなたを殺します〉の殺人予告の意味があるそうですよ。

 ep0【片翼】とは意味が異なる“殺してくれてありがとう”。
【片翼】では「私が殺したい相手を代わりに殺してくれてありがとう」の意味で美夜と伶の心情を表すフレーズに使用しました。
この言葉から本編の伶の復讐代行人エイジェントへ繋がります。

 【雪華】ラストシーンのモノローグの“殺してくれてありがとう”は【片翼】とは意味が異なります。これは美夜のモノローグでもあり、愁のモノローグでもありました。
ここで【片翼】~【雪華】を一周して、最後はすべての始まりの【片翼】に戻る仕掛けです。

 ここでミドエンシリーズ始まりの物語である【片翼】の話になりますが、美夜の幼なじみの佳苗がなぜ援助交際(売春)をしていたのか。
それは本気で美夜と同じ顔に整形するために整形費用を稼いでいた……という作中には出していない怖い裏設定がありました。

佳苗は美夜になりたかったんだ。美夜は佳苗が嫌いだけど佳苗は美夜が好きだった。(歪んだ愛)
だから最期に電話をかけて助けを求めるのも親や警察じゃなくて美夜。

美夜からすべてを奪っていくのも、あんたには私以外の人間は必要ないのよ~あんたは私のものなのよ~って愛憎が込められています。自分で考えた設定ながら怖いなぁ……。

 まず先に佳苗を見殺しにしたのは愁だから、やっぱり愁と美夜は10年前から共犯関係にあったんですね。
愁だけは、佳苗に盗《と》られなかった唯一の人でした。

 美夜と愁が出会ったのはトラットリア(イタリアンレストラン)の相席。
ロミオとジュリエットの舞台は十四世紀のイタリア。
中禅寺湖の湖畔に建つイタリア大使館別荘記念公園。
偶然の産物なのだけど、すべてがぴったりハマったイタリアの奇跡。
ありがとうイタリア。グラッツェ!!
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