〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
 今夜が美夜と過ごす最後の夜。中途半端に煽られた欲情が、このまま彼女を抱きたいと叫んでいる。
女の身体が欲しいのではない。美夜が欲しい。
欲しくて、愛しくて、壊したくて、恋しさに気が狂いそうだ。

 舌を絡めたキスの後に彼は美夜の乳房に顔を埋める。形の良い丸い乳房や谷間には、先ほど愁が刻みつけた薔薇の花弁が点々としていた。

花弁をひとつひとつ丁寧に舐めながら、目の前の柔らかな胸の感触を、手と唇を同時に動かして存分に味わう。

「待って。何もしないって言ったのに……」
『あれは中に挿れないって意味』

 愁の愛撫から逃れようと必死な美夜を捕まえて、硬く立ち上がった胸の突起に吸い付いた。啄《ついば》むように紅色の突起をしゃぶると、瞬時に甘くなった彼女の吐息が愁の頭上をふわりと揺蕩《たゆた》う。

「ぁっ……。もう……。やっぱり……嘘つき」
『悪いな。俺もそろそろ我慢の限界だ。目の前にあるのに挿れられないって、けっこう辛いもんだな』

 激しく揺れ動いた水面は、立ち上がった彼らが動くたびに波打った。壁に押し付けた美夜とキスを交わしながら、愁は片手に握った自分の分身を上下にさする。

今にも破裂しそうな大きさに肥大した愁の分身に美夜の指先が恐る恐る触れた。奇妙な生物を眺める目付きで愁の下半身を見下ろす彼女は、分身を手のひらで包み込んだ。

「初めて触ったけど生き物みたい。こういう生物、深海にいそう……」
『男の股についてる物だから正真正銘の生き物だぞ。たまに可愛い天然発言するよな。そのまま持ってて』

 美夜に触れられただけで下半身がわかりやすく反応を見せる。まったく、遅れてやってきた思春期に愁自身が参っていた。

 美夜の手の上から愁は自身の手を添え、刺激を与えられた分身はものの数秒で限界を越えた。

射精の間際に美夜を抱き寄せ、彼女の耳元で甘く呻《うめ》く。他の女を抱いた時には感じない感情が心の底からじゅわりと溢れ出て、無我夢中に奪った赤い唇は愁を優しく迎え入れた。

 愁と美夜の隙間を通って湯船に落ちていく白濁の体液は、どこにも辿り着けなかった恋の残骸。

二人の足元を浸す濁った紫の水面《みなも》に、命のない精子が海月《クラゲ》のように浮遊していた。
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