溺愛銃弾 〜スィート・マジェスティ~
シブカイが何なのかも知らないけど。玉置さんは陶史郎さんの力になりたいひとだから。ちゃんと理由があるひとだから。

「・・・でも玉置さん、困ってる」

「樹はどっちの肩持つの?僕がいないほうがいいの?」

わざと意地悪な言い方。首を大きく横にふった。

「陶史郎さんがいなかったら、ひとりじゃ全然ダメなのはわかってる。陶史郎さんが助けてくれるから一花のお母さんでいられる。・・・玉置さんにとっても陶史郎さんはそういうひとだって思う、から」

「玉置はどうでもいいから、お前は僕のことだけ考えないとね」

眼の色が変わった。見えない銃口を突き付けて、トリガーに指をかける陶史郎さん。脅しじゃないのはよく知ってる。でも。もう半歩踏み出す。

「一日くらいならお義母さんもいるし、平気だか」

「おいで」

いきなり立ち上がった陶史郎さんに引っ張られ、足がもつれそうになった。

「約束やぶった悪い子は俺にどうされるんだっけ?」

「待っ、一花が・・・っ」

「さっき母さんが母屋(むこう)に連れてった。玉置、ほかに用がないなら行け。邪魔したら樹を殺すよ?」

妖しくて残酷な、もうひとりの陶史郎さんが愉しそうに口角を上げて。

「悪いのは樹だから、何されても俺の気が済むまで我慢しなくちゃねぇ?」
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