冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 免疫抑制剤は一生涯飲み続けなければいけないものだが、併用するステロイド薬は徐々に減量していき、人によっては完全にやめることもできる。

 シェーレで働き始めた当時は、このステロイド薬を一段階減らして様子を見ていたため、ある日仕事中に血圧が下がる副作用が出てしまったのだ。

 その日は人員が足りておらず、精神的にも追われながらずっと動きっぱなしだったのもいけなかったのだろう。血管炎は疲れやストレスも強く影響するのに、調子のいい日が続いていたからと無理をしてしまったのだ。

 なんとか一日の業務は終えたものの、早く帰ろうと社内の廊下を歩いていた時、頭痛とめまいが酷くなって身体がふらついた。

 やばい、立っていられない……!と焦った瞬間、たまたま通りかかった桐人さんが私の腰を抱いて支えてくれたのだ。

 私のうつろな目に心配そうな彼の顔が映り、副作用なのかただの緊張なのか、動悸が激しくなる。

『大丈夫ですか? 医務室へ行きましょう』
『す、すみません、大丈夫です……! もう帰りますので』
『こんなにフラフラな状態で帰ると? 周囲の人間に迷惑をかけるだけですよ』

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