冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました

　冷ややかにもっともなことを言われ、ぐうの音も出ない。でも、やや厳しめの表情とは裏腹に、私の頬に添えられた手はとても優しく、この人は皆に恐れられているような冷血人間ではないのでは、と感じた。

　そして『あまり抵抗するなら、私が抱いて運びます』などと言うものだから、おとなしく医務室へ連れていってもらうことにしたのだ。

　そこへ向かう間も、彼はずっと身体を支えて気遣ってくれて、ベッドで休んでいる時にも少しだけ話をした。

　難病を患っていることやつらかった闘病生活、それを乗り切った今、多少の無理をしてでもやれるだけのことを精一杯やりたかったこと。

　医療に詳しい社長だからと甘えてしまい、反省しながらも心の内を正直に明かした。すると静かに耳を傾けていた彼は、わずかに表情を緩めて声をかけてくれたのだ。『あなたは強い人だ。ここまでよく頑張りましたね』と。

　この人はきっとお世辞は言わないだろう。そう思っていたから、彼の言葉はとても温かく、じんわりと胸に染み渡った。

　あまり知られていない病気で周囲からの理解を得るのが難しかった過去があるので、闘病の苦労も労ってもらえたようで少し泣きそうになった。