冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
甘い期待をしつつ午後三時半の院内を歩いていた時、総合受付のほうから蘭先生がやってくるのが見えた。お見舞いに来たらしきご婦人にすれ違いざまに話しかけられ、愛想よく気さくに応じている。患者さんのご家族にも好かれていそうだ。
私も一応挨拶しておこうと、彼らの話が終わったところで「蘭先生!」と呼んで手を振る。こちらを見た彼は、またぱっと笑顔になった。
「おっ、秋華ちゃんこんにちは。今日はまたどうしたの? 元気そうだけど」
「数日前からここの厨房に入ってるんです。一カ月だけの助っ人ですけど、よろしくお願いします」
「マジか、仕事? 患者さんはいいな、秋華ちゃんの手料理を食べられるなんて」
先生はいつもの軽い発言をして、「よろしくー」と笑った。その直後、少し考えるような素振りをして問いかけてくる。
「今日はもう終わり? 時間があったら、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど……」
「時間は大丈夫ですよ。なんですか?」
「実は、会ってもらいたい人がいるんだ。血管炎を発症して入院してる、二十歳の子」
頼み事は意外なもので、私はみるみる真面目な表情になった。数年前の自分と重なる。
「私と同じですね」
「ああ。その子……結海は俺の妹なんだよ」
さらに驚くべき事実を明かされ、目を丸くした。蘭先生に妹がいるのも初耳だし、まさか彼女も難病を患っているなんて。
私も一応挨拶しておこうと、彼らの話が終わったところで「蘭先生!」と呼んで手を振る。こちらを見た彼は、またぱっと笑顔になった。
「おっ、秋華ちゃんこんにちは。今日はまたどうしたの? 元気そうだけど」
「数日前からここの厨房に入ってるんです。一カ月だけの助っ人ですけど、よろしくお願いします」
「マジか、仕事? 患者さんはいいな、秋華ちゃんの手料理を食べられるなんて」
先生はいつもの軽い発言をして、「よろしくー」と笑った。その直後、少し考えるような素振りをして問いかけてくる。
「今日はもう終わり? 時間があったら、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど……」
「時間は大丈夫ですよ。なんですか?」
「実は、会ってもらいたい人がいるんだ。血管炎を発症して入院してる、二十歳の子」
頼み事は意外なもので、私はみるみる真面目な表情になった。数年前の自分と重なる。
「私と同じですね」
「ああ。その子……結海は俺の妹なんだよ」
さらに驚くべき事実を明かされ、目を丸くした。蘭先生に妹がいるのも初耳だし、まさか彼女も難病を患っているなんて。