冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 結海ちゃんが患っているのは、私とは少し違う種類の血管炎。同じ血管炎でも炎症を起こす血管が違うと症状も様々なのだが、その多くが原因不明で難病指定されている。

 彼女は一カ月ほど前に症状が出始め、入院して二週間が経つらしい。この病気は発熱や頭痛など風邪に似た症状や、全身に発疹が出たりひどい関節痛があったりするのだが、つらいのは身体的なことだけではない。

 様々な検査をしてやっと確定する病気だし、薬を飲み始めたばかりだと血液検査の結果も安定しないので、一喜一憂して精神的に参ってしまう。

 なにより、一生付き合っていかなければならない難病になってしまった、という事実がきつい。私もそうだったからよくわかる。

 それらを話しながらさっそく向かったのは、私もお世話になった病棟の六階。蘭先生は四人部屋の窓際のベッドに向かい、「結海、開けるぞ」と声をかけてカーテンを開けた。

 先生の背後から顔を覗かせると、リクライニングを上げたベッドに座ってスマホを弄るボブヘアの女の子がいる。

「調子はどうだ? 昼飯は珍しく残さなかったみたいだけど」
「いつも通り暇だよ……って」

 つまらなそうな顔でこちらを向いた結海ちゃんは、背後霊のような私に気づいて目を丸くする。異母兄妹なので先生と顔はあまり似ていないようだが、目がぱっちりしていて色白でとても可愛い。

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