冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 私と話していくらか気持ちが前向きになってきたのか、結海ちゃんはどことなくしっかりした面持ちに変わってきた。

「……そうですよね。うん。もっと重い合併症になるリスクを考えれば、顔や身体が丸くなるくらいどうってことないか。生きてるだけで丸もうけですもんね」
「そうだよ。健康で普通に生活できるって、すごく幸せなことだから」

 私もあの時つくづく感じた健康のありがたみを、ずっと忘れないようにしなくては。

 穏やかに笑い合いながらしばし雑談をしていると、結海ちゃんがこちらをじっと見ていることに気づく。仕事終わりでメイクも崩れているだろうから、あまり見られたくはないけれど。

「秋華さんってすごく可愛いですよね。彼氏とかいるんですか?」

 この顔をそんなふうに言ってくれるなんて、お世辞だとしても嬉しい。彼女は興味津々な様子で私が答えるのを待っているので、ちょっぴり照れつつ口を開く。

「えっと、彼氏じゃなくて……旦那さんがいます」
「きゃ~人妻だった~!」

 人妻……確かにそうなのだけど、人妻という単語が自分に似合わなすぎて笑える。

 控えめに黄色い声をあげた結海ちゃんは、なにかを思い出したような調子でふいにぼそっと呟く。

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