冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
「大丈夫かな……」
「え?」

 なにが大丈夫なのかわからず首をかしげるも、彼女は「なんでもないです」と意味深な笑みを浮かべるだけ。少々気にはなったけれど、すぐにまた病気の話に戻ったのですっかり頭から抜けていった。


 二十分ほど話したところで蘭先生が戻ってきて、私も結海ちゃんも笑顔で手を振って別れた。病気あるある話で盛り上がって、なんだか私のほうが楽しんじゃったかも……と思いながら出口に向かって歩く。

 蘭先生は今日はもう手術が入っていないので、私を見送ってくれるらしい。病院を出るとリハビリにもちょうどいい庭園があるので、そこをゆっくり歩きながら話をする。

 午後四時になる今は日がだいぶ落ちてきて、草木も先生の白衣もオレンジ色に染まって綺麗だ。

「今日はありがとう。たった数十分で結海の顔が明るくなってたから驚いた」
「いえ、私も楽しかったです。結海ちゃん、素直で可愛い子ですね」

 病気のことだけじゃなく、大学での話も少し聞けて面白かった。私と話している時の彼女はそんなに塞ぎ込んだ様子はなかったので、このまま前向きに頑張ってほしい。

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