冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 まさかのひと言を告げられ、初めて彼の笑みを見た瞬間、私は完全に陥落してしまったのだ。ドキドキと胸が高揚して、彼の姿がいつも以上にきらめいて見えた。

 あの時、ピークが去って周りに人がいない状況でよかった。彼の貴重な微笑みは、私だけのものにしておきたいから。

 地位も能力も容姿も、自分とは天と地ほど違う完璧な人が、まさか私の気を引きたかったなんて。

 到底信じられなかったけれど、それから仕事が終わると彼が待っていて食事をご馳走してもらったり、他の人には絶対に見せない微笑みを向けてくれたりして、自分は特別なのだと感じるようになった。

 そして、恋人未満の関係が二カ月ほど続いた頃。彼の誕生日が近いと知り、ほんの気持ちだけでもプレゼントをあげたいと思った私は、彼の車に乗せてもらった際になにか欲しいものはあるか尋ねてみた。

 本当に、なにげなく聞いてみただけだったのに──。

『あなた以外に、欲しいものなどありません』

 まさかの返答に、心臓が止まりそうなほどの衝撃を受けた。

 一直線に向けられる瞳に私だけが映っていて、みるみる頬が熱くなり胸が早鐘を打つ。しかし私は自分に自信がなくて、彼から目を逸らして俯いた。

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