冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 あれ以来、お互いよそよそしい態度が続いている。ルームメイト状態なのは、気まずい時に顔を合わせなくていいという利点があるけれど、なかなか仲直りのきっかけが掴めないのが欠点だ。

 だから今日、バレンタインという特別な日を利用して、チョコをあげて仲直りしたい。そのために昨日の夜、彼が自分の部屋に入ったのを見計らってせっせと作っていたのだ。

 ただ、桐人さんがどんなリアクションをするか、予想できなくてちょっと怖い。

 いつもなら〝食べるのもったいないから取っておく〟とか言いそうで、それもある意味怖いのだけど、きっととっても嬉しそうな顔をしてくれるだろう。でも今夜はどうだろうか。

 すでに若干緊張し始める私をよそに、結海ちゃんは満足した様子でスマホをテーブルに置いて言う。

「お兄ちゃんもまたえげつない量のチョコをもらうんだろうなぁ。毎年、紙袋いっぱいにして帰ってきてたから」
「あー、やっぱり。でも本命は奥さんだもんね」

 ふふっと笑うと、彼女はなぜかキョトンとして私を見つめる。

「奥さんはいないですよ。一年前に離婚したから」

 ……え? 離婚した?

 ぱちぱちと瞬きをした私は、驚いてベッドのほうへ身を乗り出す。

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