冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 桐人さんの大きすぎる愛を、これからも受け止めていられるかは正直わからない。

 ただ今確かなのは、私たち夫婦はちゃんと愛し合っていて、ずっと一緒に生きていく道を自分たちで選び、いい関係を築こうと努力しているということ。それを簡単に投げ出す気はない。

 蘭先生は十歳も年上なのに可愛らしく感じる笑みを浮かべ、強張った表情の私を甘く誘惑してくる。

「逃げたくなったら俺のところにおいで。バツがついても俺とおそろいだしね」
「行きませんっ!」

 もう一度きっぱり断った。

 本気であってもなくても、口説くのはやめていただきたい。どう誘惑されようと、私の心は絶対に揺らがないのだから。

「先生の言うこともわかります。きっと幻滅することもあるだろうし、ときめきはいつかなくなるかもしれない。だけどその時、それでも一緒にいたいって思えるような愛情を、これから育てていきたいんです」

 夫婦になってもいつまでも恋人同士のような熱を保っていられるのが理想だけれど、現実はそううまくいかないとわかっている。

 でも、それを乗り越えたふたりにだけ生まれるものがあると思っているし、他の人に乗り換えるなんて考えられない。

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