冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 和奏のツッコミの通り、身体を重ねて以来の彼は、やっぱり四六時中一緒にいたい欲が沸き立っているらしい。でも私も社長モードの桐人さんを見たいと思うので、浮かれているなと自覚しているし彼の気持ちもわかった。

 とはいえ、彼の執着っぷりが過度に増すことはなく、いいバランスでとっても幸せな日々を過ごしている。

 夜は以前のように同じベッドで寝るようになったし、食事や送迎のルールはなくして臨機応変にやっている。理想的な夫婦生活をやっと手に入れた感じだ。

「シェーレはどう? 特に変わったことはない?」
「相変わらずや。社長が食堂に来る頻度があからさまに減ったくらいで」

 和奏の言葉に笑いながらしばしお互いの職場の話をしていると、彼女は「ああ、そういえば」となにかを思い出して話し出す。

「白鳥絢の家族の誰かが臨床試験を受けるとかって小耳に挟んだわ。シェーレで開発した機器を使うんだとか」

 絢の名前が出てきて、つきまといが発覚した時の彼女の顔を蘇らせつつ、焼き鳥をごくりと飲み込んだ。

 あれ以来、彼女は本当に食堂に姿を見せなくなったので、最近どうしているのかもわからなかった。でも今の話が本当なら、仕事と家族にちゃんと向き合っているのだろう。

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