冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 彼が執着するほどの魅力が自分にあるとは思っていないから、なにかきっかけがあったのなら知りたい。お互いに意識し始めたのは、医務室で話したあの時からだというのはわかっているけれど。

 帰ったら本人に聞いてみようかなと思っていると、頬杖をついた和奏が微笑ましげに口を開く。

「とどのつまり、可愛くてしゃーないんやないですか? 秋華は頑張り屋で明るいええ子やもん。社長がドハマりしたってなんもおかしないわ」

 純粋にそう言ってくれるので、心がほっこりさせられた。誰かを深く愛するのに明確な理由なんてないか。

 お兄ちゃんも穏やかな笑みを浮かべて頷き、なぜか泣きマネをする。

「えぇ友達を持ったなぁ。兄ちゃん泣いてまうわ~」
「さっきからなんで関西弁が移ってんねん」

 すかさずツッコむ和奏とのやり取りが面白くて、私は終始笑っていた。


 それから和奏の関西弁講座が始まり、しばらく楽しい時間を過ごした。彼女にやよいの写真を見せ、お兄ちゃん共々うさぎの可愛さについて語ったりもした。やよいもあれから体調を崩すことはなく、元気に走り回っているようなのでひと安心だ。

 いい感じに酔いが回ったところで桐人さんから店の近くに着いたと連絡が来た。今夜は迎えに来てもらうことになっていたから。

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