冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 ついでに和奏も家まで送ってもらうつもりだったのだが、思いのほか兄と気が合って盛り上がっていたので、彼に責任を持ってお願いすることに。もしかして仲が進展しちゃうかも?と期待してしまうのは、自分が恋愛脳になっている証拠だろうか。

 車のもとへ向かうと、桐人さんが穏やかな笑みを湛えて待っていた。彼を見るだけで一気に心が安らぐ。

「おかえり。楽しかったか?」
「はい、とっても! 偶然お兄ちゃんも来たんですよー」

 上機嫌で助手席に乗り込んだ私は今しがたの話をして、彼はそれを和やかに聞いていた。酔っているせいなのか、桐人さんがいつもに増して愛しく感じて無性に甘えたくなる。

 帰宅して玄関に入ると、靴を脱ぐのも待ちきれなくてぎゅっと抱きついた。逞しい胸に頬をすり寄せて、心の安定剤のような彼の香りを吸い込む。

「桐人さん、好き。迎えに来てくれてありがとう」

 思考も口も緩んで、心の声が全部こぼれる。目を閉じて抱きついたままの私を、桐人さんはとっても愛しそうにしっかりと抱きしめ返した。

「そんなに可愛いことされると抑えられなくなる。君を淫らにさせてやりたい衝動を」
「……抑えなくていいですよ」

 大胆な言葉を口にして、誘うように彼を見上げながら自覚した。……私、欲情している。

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