冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
休職したスタッフの復帰の目処が立ち、白藍総合病院でのヘルプは三月の第一週目までに決まった。私がいられるのはあと一週間となった今日も、早番で早朝から出勤している。
朝食は比較的簡単なメニューで、調理を手伝ってできたものをお皿に盛りつけ、ベルトコンベアでゆっくり流れてくるトレーに乗せていく。ただし、それは食数が多い普通の常食だけ。
私が今担当している腎臓病食はそれほど食数は多くないので、配膳車にセットしたトレーに直接お皿を乗せる方法をとっている。普通のものと別の調理法で作った料理が多いので、注意しなければいけない。
朝食を出し終わってひと息ついたら、食事が終わった時間を見計らって早番の人が下膳車を取りに行く。今日は私がたまたまベテランの女性チーフと病棟へ向かうことになり、その最中に彼女は明るく声をかけてくれている。
「稲森さんは覚えも早いし、要領よくてほんと助かってるのよ。もうこっちに異動しちゃえばいいじゃない」
「あはは。そんなふうに言ってもらえて嬉しいです」
私に主に仕事を教えてくれたのがこのチーフで、とてもよくしてもらっているのであと一週間で離れるのはちょっぴり寂しい。でもいい経験ができたし、やっぱりここへ来てよかった。