冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
「ここで寝てたら風邪をひく。ベッドへ行こう」
「待って、そんな運んでもらわなくても……!」
「俺が少しでも君に触れていたいんだ」

 そんなふうに言われて頬にキスされたら、もう抵抗なんてできない。それに、まだ身体が怠い感じがするので、運んでもらうのはちょっとありがたかったりもする。

 おとなしく彼の首にしがみつき、寝室に入るとベッドに優しく寝かされた。毛布をかけてくれる彼に、今日ずっと気がかりだったことを聞いてみる。

「あの……大丈夫ですか? 臨床試験でのトラブル」

 ストレートに尋ねると、桐人さんは驚いた様子でぴたりと動きを止める。

「なんで知ってるんだ?」
「偶然、白藍で絢に会ったんです。お父さんが入院した話を聞いて」

 端的に説明すると、彼は納得したように「そうか」と頷き、おもむろにベッドの脇に腰を下ろした。

「本当に不具合が原因か、今調べているところだからなんとも言えない。当然、ベストな状態だと判断したから臨床試験に移った。不具合など起こさない自信もあったんだ。それなのに……」

 彼は初めて苦悶の表情をかいま見せ、ぐっと手を握りしめる。

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