冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
「もし本当に機器が原因なら、すべて俺の責任だ」
「桐人さん……」

 自分を責めているような彼の姿に、胸が締めつけられる。

 絢に会った昼間と同様、どんな言葉をかけたら彼の心がラクになるのかわからない。〝桐人さんのせいじゃない〟というのはきっと彼が欲しい言葉ではないし、〝大丈夫ですよ〟と無責任に励ますのも違うだろう。

 しかし私が口をつぐんでいる間にも、彼の声に少しだけ力強さが戻ってくる。

「俺たちにできるのは、真摯に白鳥さんと向き合って問題点を解決していくことだけだ。過去には戻れないからな。二度と同じトラブルが起こらないよう、改善していくしかない」

 そうだ、桐人さんが困難にぶち当たったのはこれが初めてではないだろう。シェーレがトップシェアを誇る大企業に成長したのは、これまでも葛藤と試行錯誤を繰り返して、質のいい製品を世に出してきたからに違いない。

 かく言う私も、シェーレの臨床試験で助けられた者のひとりだ。

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