冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
翌日から二日ほど倦怠感は続き、なんとなく筋肉痛のような痛みを感じるも高熱は出ていないので普通に生活していた。血管炎の時のような発疹も出ていないし、風邪のひき始めかもしれない。
ちゃんと避妊していたから妊娠の可能性も低そう。万が一奇跡が起こっていたとしたら、それはとっても喜ばしいのだけれど。
ひとまず様子を見ながら遅番の仕事をして、夕食の提供まで大きな問題はなく働けた。あともう少しでヘルプ期間も終わるから、このまま乗り切りたいと思いながら調理器具の洗浄をしていた時……。
「稲森さん、ちょっと」
なにやら深刻そうな調子で呼ばれ、ドキリとした。これは穏やかな話ではないなと察し、やや緊張気味についていくと、厨房を出たところで問いかけられる。
「稲森さん、今日も腎臓病食の盛りつけやってたでしょう。夕食にキウイフルーツつけた?」
「いえ、つけてないです。生の果物の代わりにゼリーでしたよね」
「そう。やっぱりわかってるわよね……」
腕を組んで考え込む彼女に、たまらず「どうかしたんですか?」と問うと、困った顔で説明する。
「透析患者の白鳥さんの食事に、生のキウイがついてたっていうのよ。稲森さんが間違えたとは思えないんだけど、娘さんが怒っちゃってて」
「白鳥さんに……!? そんな、ありえないです! 私、キウイを触ってもいないですから」