冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 私は絶対にミスしていないと自信を持って言えるけれど、盛りつけを担当した以上責任が発生する。絢にまっすぐ向き合い、友人ではなく調理員として深く頭を下げる。

「ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。カリウムの制限についてはもちろん理解していますし、注意もしていました。厨房では絶対に果物はつけていないんです」
「じゃあこれはなに? お見舞いにも持ってきていないし、厨房で出さなければここにあるわけがないでしょう」

 どんどん敵意をむき出しにされるも、ここで引いたら認めることになってしまう気がして「でも──」と反論しようとする。

 その時、黙っていたチーフががばっと頭を下げた。

「申し訳ありません。腎臓病食の注意点を改めて職員に周知させ、二度と間違いがないよう徹底していきます」

 謝罪するチーフを見て、理不尽さを感じながらも諦めの気持ちが湧いてくる。どれだけ主張しても、私が間違っていないという証拠がないなら折れるしかないだろう。

 なにも悪くないチーフに謝らせてしまった罪悪感も押し寄せ、肩を落として私も「申し訳ありませんでした」と頭を下げた。

 そこで、ずっとタイミングを窺っていた様子の白鳥さんが口を開く。

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