冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
「なのに、こんなことになってしまって……。父に申し訳ない気持ちと、無念さでいっぱいです」
泣きそうな声で心情を吐露する彼女に、桐人さんの冷静な声が投げかけられる。
「今回のことは私の責任です。あなたが罪悪感を抱く必要はありません」
「社長……」
言い方は淡々としたものだけれど、彼の気遣いも感じられる。ちらりと様子を窺うと、絢は涙が浮かぶ瞳でじっと桐人さんを見つめていた。
数秒後、おもむろに彼女が一歩近づき、桐人さんの胸に飛び込む。私はひゅっと息を呑み、咄嗟に顔を背けた。
その瞬間、ちょうど看護師さんと目が合った。挙動不審な私を見て不思議そうにしていたため、会釈して慌ててその場を離れる。
なに……なに今の。やめてよ、私の旦那様に。桐人さんも同情して慰めているんだろうか。根は優しい彼ならありえなくはない。それで絢が勘違いしたら困る。
彼女がつらい思いをしているのも、そういう時こそ好きな人に寄りかかりたくなるのもわかる。でも、桐人さんだけは渡したくない。触れないでほしい。
悔しさや独占欲、いろいろな感情が混ざり合って、逃げるように仕事に戻った。
泣きそうな声で心情を吐露する彼女に、桐人さんの冷静な声が投げかけられる。
「今回のことは私の責任です。あなたが罪悪感を抱く必要はありません」
「社長……」
言い方は淡々としたものだけれど、彼の気遣いも感じられる。ちらりと様子を窺うと、絢は涙が浮かぶ瞳でじっと桐人さんを見つめていた。
数秒後、おもむろに彼女が一歩近づき、桐人さんの胸に飛び込む。私はひゅっと息を呑み、咄嗟に顔を背けた。
その瞬間、ちょうど看護師さんと目が合った。挙動不審な私を見て不思議そうにしていたため、会釈して慌ててその場を離れる。
なに……なに今の。やめてよ、私の旦那様に。桐人さんも同情して慰めているんだろうか。根は優しい彼ならありえなくはない。それで絢が勘違いしたら困る。
彼女がつらい思いをしているのも、そういう時こそ好きな人に寄りかかりたくなるのもわかる。でも、桐人さんだけは渡したくない。触れないでほしい。
悔しさや独占欲、いろいろな感情が混ざり合って、逃げるように仕事に戻った。