冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました

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 街中がきらきら輝く十二月二十四日のお昼時、私が調理員として働く社員食堂のメニューもクリスマスの特別仕様となっていた。

 国内最大手の医療機器メーカー『シェーレ』は、従業員数が五千名を超える大企業。横浜市内にある本社ビルの十階にこの食堂があり、ここで働く社員の多くが毎日利用している。

 健康的で見た目も鮮やかな十数種類の副菜をビュッフェ形式で提供し、和洋中のメイン料理、麺類、丼ものなどそれぞれのブースがあって好きなものを組み合わせられる。ショッピングモールのフードコーナーさながらだが、内装はホテルのレストランのようにおしゃれで落ち着いた雰囲気だ。

 私が担当しているのは、メインの和食のブース。お昼の十二時頃になったら調理のほうからカウンターへ移り、続々とやってくる社員の皆さんの希望を聞いてそれを渡す。

 今日はクリスマスのせいか洋食を食べる人が多く、こちらも一応特別メニューにはしているものの、あまり混雑していない。

 茶色のベレー帽を被り、同じ色のエプロンをつけたスタイルでカウンターに立つ。気さくな社員の方々とたわいない言葉を交わしつつ渡していると、ふと異彩を放つひとりの男性がやってきたのに気づいた。

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