冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
「今回のステロイド薬はすでに承認されています。つい数日前に申請が下りたばかりでまだ普及もしていないので、ご存じないかと思いますが」

 自信を持って言うと、先生は少し驚いた様子で目線を上げた。

「副作用がまったくないわけではありませんが、従来のものに比べたら症状は格段に軽くなっていますし、重篤なものはゼロです。秋華に初めて会った頃から、ずっと研究開発し続けてきたので」

 彼女が副作用で見た目が変わって苦しんでいるのを知り、もっと症状が軽くなる薬を作れないかと考えるようになった。ちょうど新薬部門を立ち上げる話も出ていたため、各方面にかけ合って研究を進めてきたのだ。

 蘭先生はなにかを悟ったように目を見開く。

「じゃあ、新薬を作ったのは秋華ちゃんのためだと言っても過言ではない、と……?」
「そうなりますね」

 新薬が出来上がるまでには、長い年月と膨大な費用がかかる上に、開発成功率は三万分の一と言われるくらい難しい。それをやってのけたのには、秋華との出会いが必要不可欠だったわけだ。

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