冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 先生も察したのだろう。度肝を抜かれたように呆然とした彼は、〝敵わない〟とでも言いたげな笑みをふっとこぼす。

「あなたの愛が、まさかそこまでとはね……。おみそれしました」

 彼の声から嫌みっぽさは感じられず、俺は肩の力を抜いた。

 それから薬について説明すると、「前向きに検討します」といういい返事がもらえた。秋華の出会いから生まれたそれを、本人に使ってもらえるのはとても感慨深い。

 秋華がきっかけだったのは新薬だけじゃない。仕事への熱意も、身を焦がすような恋愛も、すべて彼女が教えてくれた。

 今の俺を作った、かけがえのない最愛の人。彼女を幸せにするためならなんだってできる。

 この激重感情を知ったら、君はまた笑うのだろう。呆れながらも、心から嬉しそうに。


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