冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
愛は重いくらいがちょうどいい
──熱に浮かされている間、夢を見た。
いや、夢というか記憶だろうか。六年前に入院していた時、庭園で話した眼鏡をかけた男性とのやり取りだった。
炎症が治まるまで手術は難しいと言われ、将来は真っ暗闇だったあの頃。再燃してしまった今、当時の苦しさを鮮明に思い出したからかもしれない。
家族がとても心配しているのはわかりきっていたから、なるべく明るく振る舞っていた。負の感情は心に溜まる一方で、もしも手術ができず歩けなくなったら……という恐怖や、副作用のつらさを第三者の彼に吐き出してしまったのだ。
『手足に気持ち悪い発疹が出てるのも、顔が丸くなってるのも病気のせいなのに、彼氏は幻滅したように離れていったんです。結局見た目なのかってすっごいムカついたけど……恋人が健康体じゃなかったら、そりゃあ面倒ですもんね』
いろいろな制約が生まれて手がかかるようになったら、中身も可愛く思えないだろう。だから仕方がないとすぐに諦めがついたし、今ではもう彼の顔も声もぼんやりとしか思い出せない。私の恋心もその程度だったのだ。