冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
これから先も恋愛はできないんじゃないか。それどころか、ちゃんと働いて稼ぐことも、好きな場所へ行くことすらもできなかったらどうしよう。ネガティブ思考は止まらなくて、ずっと悪いほうにばかり考えてしまう。
顔を隠す癖もついていて、終始俯き気味で話していた私に、静かに耳を傾けていた彼が突然こう言った。
『顔を上げてごらん』
どきりとして少しためらったけれど、優しい声に導かれるようにしてゆっくり顔を上げる。男性のほうは見られず、美しい夕日に目線を向けると、隣で彼が微笑んだ気がした。
『君はとても可愛いよ。いつか必ず元気になるし、君のすべてを愛してくれる人がきっと現れる』
なんて無責任な言葉をかけるんだろうと思った。可愛いなんて見え透いたお世辞だし、なんの根拠があってそんなふうに言えるのかと。
……だけど、嬉しかった。ただの出まかせだとしても、不完全な私をまるごと包んでくれるような声が、とても心地よくて涙が出そうだった。
一度きりしか会わなかったあの男性との会話は、今も夢に見るくらい印象に残っている。元カレとの思い出なんてほとんど消えてしまったのに。しかも、なんで桐人さんの声で再生されるんだろう。
顔を隠す癖もついていて、終始俯き気味で話していた私に、静かに耳を傾けていた彼が突然こう言った。
『顔を上げてごらん』
どきりとして少しためらったけれど、優しい声に導かれるようにしてゆっくり顔を上げる。男性のほうは見られず、美しい夕日に目線を向けると、隣で彼が微笑んだ気がした。
『君はとても可愛いよ。いつか必ず元気になるし、君のすべてを愛してくれる人がきっと現れる』
なんて無責任な言葉をかけるんだろうと思った。可愛いなんて見え透いたお世辞だし、なんの根拠があってそんなふうに言えるのかと。
……だけど、嬉しかった。ただの出まかせだとしても、不完全な私をまるごと包んでくれるような声が、とても心地よくて涙が出そうだった。
一度きりしか会わなかったあの男性との会話は、今も夢に見るくらい印象に残っている。元カレとの思い出なんてほとんど消えてしまったのに。しかも、なんで桐人さんの声で再生されるんだろう。