冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
「夜分遅くまでありがとうございました。あとは私にお任せください。手術以外なら全力で秋華のサポートをしますので」
「根に持つなぁ……」
苦笑混じりに返す蘭先生。ふたりにしかわからないやり取りをした後、彼は「では、失礼します」と声をかけて病室を出ていった。
頭を下げていた桐人さんは、私が掠れた声で名前を呼ぶとはっとしてこちらを振り返り、近づいてくる。
「悪い、起こして。具合はどうだ?」
「ちょっとよくなってきました。……っていうか」
私はさっきまでの怠さが嘘のように上体を起こそうとしながら、信じられない気持ちで問いかける。
「六年前に臨床試験を提案したのって、桐人さんだったんですか? 私のこと知ってたの!?」
一瞬キョトンとした彼は、ふっと苦笑を漏らして「なんだ、聞いてたのか」と呟いた。
ベッドのリクライニングを起こしてもらい、脇の椅子に座って語り始める彼を見つめる。
「知ってたよ。当時は営業部長としてよく白藍に来ていたから。手術が難しいと絶望していた君をどうにか助けてあげたくて、シェーレが開発中だった人工血管を使ってくれと頼み込んだんだ。蘭先生には安全性の問題でかなり反対されたが」
「根に持つなぁ……」
苦笑混じりに返す蘭先生。ふたりにしかわからないやり取りをした後、彼は「では、失礼します」と声をかけて病室を出ていった。
頭を下げていた桐人さんは、私が掠れた声で名前を呼ぶとはっとしてこちらを振り返り、近づいてくる。
「悪い、起こして。具合はどうだ?」
「ちょっとよくなってきました。……っていうか」
私はさっきまでの怠さが嘘のように上体を起こそうとしながら、信じられない気持ちで問いかける。
「六年前に臨床試験を提案したのって、桐人さんだったんですか? 私のこと知ってたの!?」
一瞬キョトンとした彼は、ふっと苦笑を漏らして「なんだ、聞いてたのか」と呟いた。
ベッドのリクライニングを起こしてもらい、脇の椅子に座って語り始める彼を見つめる。
「知ってたよ。当時は営業部長としてよく白藍に来ていたから。手術が難しいと絶望していた君をどうにか助けてあげたくて、シェーレが開発中だった人工血管を使ってくれと頼み込んだんだ。蘭先生には安全性の問題でかなり反対されたが」