冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
「ほんでほんで? どうなったん!?」
ホテルの広い会場の端で私の話を聞いていた、関西出身の同僚であり親友の和奏が身を乗り出してくる。彼女もシェーレの社食で一緒に働いている、心強い仲間だ。
私たちの会社、パーフェクト・マネジメントの社員が集う忘年会に参加している今、あの日の出来事を報告中だ。私も和奏も、取り皿にビュッフェの料理を乗せたまま、話に夢中であまり減っていない。
つい一昨日のクリスマスイブの一夜を思い出すと、恥ずかしいしもどかしい。
「しばらくキスした後、『ケーキより先に味わってごめん』って微笑まれて」
「きゃ~、もっと味わってええんやで社長! でっ!?」
「ちゃんとケーキを食べて、寝ました。いつも通りに」
「おぉ~! ついに寝…………ん? 『いつも通り』?」
盛り上がりが最高潮に達したかと思いきや、和奏はぽかんとして首をかしげた。私はちょっぴり口を尖らせて頷く。
「はい。健全に」
「なんでやねんッ!?」
それは私が聞きたい。あんなに甘い雰囲気で濃厚なキスをして、桐人さんだって欲情していたっぽかったのに、結局なにもなかったんだから。