冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 私も、桐人さんともっと深く繋がりたい。悩み事があるならふたりに相談するだけじゃなく、本人とちゃんと向き合わないと。

「麗さんの言う通り、話し合ったほうがいいですよね。夫婦なんだから」

 迷いが吹っ切れたように感じながら、背筋を伸ばして言う。麗さんも和奏も微笑んで頷き、明るく励ましてくれた。


 忘年会は三時間ほどで終わり、ほろ酔いのいい気分で和奏と一緒にホテルを後にした。ホテルと駅が直結しているので、電車で帰る彼女を改札で見送ってから外へ出る。

 駅のすぐそばに桐人さんが迎えに来てくれている。黒光りする高級車を見つけて助手席に乗り込むと、彼の微笑みに迎えられた。

「すみません、待たせちゃって。ありがとうございます」
「お疲れ様。ひとりで帰らせたりしないよ」

 まったく嫌な顔せずそんなふうに言ってくれる、本当に素敵な旦那様だ。物申したいことはたったひとつだけ。

 いい感じにアルコールも入っている今なら、深刻にならない調子で話せるかもしれない。〝どうして抱かないんですか?〟などと直接的に聞かないで、遠回しに言ってみよう。

 しばらく忘年会でのことを話してから、意を決して切り出す。

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