冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
百八十センチの高身長。さらりと流れる黒髪、ぞくりとするクールな魅力がある切れ長の二重、綺麗と表現するのが相応しい顔立ち。
そこにいるだけで皆を圧倒する存在感を放つ彼こそが、この大企業シェーレのトップ、八影 桐人だ。
三十二歳にして社長に上り詰めた彼は、創始者の血を引いた御曹司である。しかし、ただ一族だから今の地位にいるわけではない。医療の知識もあり、自ら新しい製品の研究開発に関わったり承認申請を行ったりもする、超優秀な人なのだ。
思わず目を奪われ、副菜をトレーに乗せてこちらにやってくる彼を密かに見つめる。すると、四十代くらいの男性社員がどこか緊張した面持ちでさっと近づいてきた。
「すみません八影社長、この後少しだけお時間をいただけませんか? 新モデルの注射針の件でお話が……」
「製造業者に拒否されましたか。〝これ以上細い針は作れない〟と」
社長がまるで予想していたかのごとく言い、男性社員は若干面食らった様子で「そ、その通りです」と軽く頭を下げた。
「世界一細い針を作ることになります。並大抵の技術では厳しいですから、やはりどこも難色を示していて」
「どこも? どれくらいの業者に協力を依頼したんですか? まさか百社程度で諦めようとしているわけではありませんよね」
社長の冷たく光るナイフのような瞳を向けられた社員は、図星を指されたのかビクッと肩を跳ねさせた。
そこにいるだけで皆を圧倒する存在感を放つ彼こそが、この大企業シェーレのトップ、八影 桐人だ。
三十二歳にして社長に上り詰めた彼は、創始者の血を引いた御曹司である。しかし、ただ一族だから今の地位にいるわけではない。医療の知識もあり、自ら新しい製品の研究開発に関わったり承認申請を行ったりもする、超優秀な人なのだ。
思わず目を奪われ、副菜をトレーに乗せてこちらにやってくる彼を密かに見つめる。すると、四十代くらいの男性社員がどこか緊張した面持ちでさっと近づいてきた。
「すみません八影社長、この後少しだけお時間をいただけませんか? 新モデルの注射針の件でお話が……」
「製造業者に拒否されましたか。〝これ以上細い針は作れない〟と」
社長がまるで予想していたかのごとく言い、男性社員は若干面食らった様子で「そ、その通りです」と軽く頭を下げた。
「世界一細い針を作ることになります。並大抵の技術では厳しいですから、やはりどこも難色を示していて」
「どこも? どれくらいの業者に協力を依頼したんですか? まさか百社程度で諦めようとしているわけではありませんよね」
社長の冷たく光るナイフのような瞳を向けられた社員は、図星を指されたのかビクッと肩を跳ねさせた。