冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました

「飲み物買おうかと思ったけど、やーめた。時間あるならちょっとお茶してかない？　こうやってたまたま会うのも珍しいし」

　予想外に誘われてしまい、内心ぎくりとした。

　お茶がしたいなんて言われたのは初めてだ。いったいなんの思惑が？と勘繰ってしまうくらいには彼女を警戒している。

「なにか予定ある？」
「あーうん、ちょっとね。ごめん」

　へらりと笑い、あっさり断った。しかし絢はなぜか真顔でずいっと近づいてきて、突拍子もないことを言い出す。

「まさか、デートじゃないわよね？」
「はっ!?　違うよ。なんで？」
「だって……秋華、仲いいじゃない。八影社長と」

　ピンポイントで彼の名前を出され、肩が跳ねるくらいドキッとした。思わず目を見開く私を、彼女の探るような猫目がしっかり捉えている。

　その瞬間、高校時代の記憶が蘇る。私の友達で、絢に彼氏を奪われたという子がいたなと。

　絢は自分が欲しいものはなんとしてでも手に入れたい性格らしい。恋愛に関しては、当時からいい話を聞かなかった。

　やばいやばい。この子に知られたら絶対面倒なことになる。そう直感して、なんとか平然を装う。