冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました

 大晦日はふたり分の小さなおせちを作り、夜は桐人さんとまったり過ごして新年を迎えた。

 私が調理師になったのは、両親が育てた野菜でご飯を作っているうちに、料理が好きになっていたから。おせちも張り切って作ったら、桐人さんがどれも美味しいと褒めてくれた。彼と出会ってから、かなり自己肯定感を上げてもらえている気がする。

 そして一月二日の今日は、桐人さんと初詣をしに神社へやってきた。正確には、彼とふたりではないのだけれど。

 たくさんの人で賑わう境内を、お賽銭箱に向かってゆっくり歩く私の隣には、ニコニコした着物姿のお義母様がいる。

「まさかお嫁さんと初詣に行くことになるとはね~。娘ができたみたいで嬉しいわぁ」
「そんなふうに言っていただけて嬉しいです」

 朗らかで若々しいお義母様に返した言葉も、笑顔も本物だ。家柄がいいわけでもないのに、私をちゃんと妻として認めて温かく接してくれる彼女のことが好きだから。

 八影家では家族そろって初詣に行く習慣があるらしいので、お嫁入りした私も同行している。しかも、皆さんに倣って和装で。

 私は紺色の着物に、梅の花柄が可愛いピンクベージュの羽織を合わせた上品なスタイル。対するお義母様は、意外にも遊び心のあるストライプ柄の着物を着こなしていたので、カッコいい!と惚れ惚れしてしまった。

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