冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
「もうちょっと言い方があるでしょうに」
「もちろん褒めてるし、尊敬してるんだよ」

 お義母様が目を据わらせて注意すると、頼久さんはそうフォローしていた。彼の表情を見れば、今の発言が嫌みなどではないのは明らかだ。

 弟さんも一目置いているくらい、桐人さんの仕事への執着心は強いらしい。そういえば私のメモや写真もしっかり保管していたし、情報収集や分析をするのが癖みたいになっているせいなのかもしれないな。

 ふたりとの会話を楽しみつつ、まだ仕事の話を続けているお義父様たちに目をやる。

「桐人も、新薬部門が今後飛躍するように神頼みしておいたらどうだ」
「神なんてアテにしませんよ。そんな不確かなものに頼らなくても、自分で成功させてみせます」

 まっすぐ前を見つめ凛とした表情で答える彼からは、確固たる自信としなやかな力強さを感じた。厳しくても、社員の皆が彼についていくのがわかる。

 シェーレでは医療機器だけでなく、医療用医薬品や手術の際に使う薬剤を開発する部門を新たに設立している。まだ始まったばかりだけれど、軌道に乗ればシェーレは業界トップの企業として独走状態になるに違いない。

 それを先導していくのはやはり桐人さんだ。重要な使命を託され、実力で全うしようとする彼が本当に素敵だし、私も尊敬する。

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