冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
──『あなた以外に、欲しいものなどありません』
桐人さんに告白されたあの日、誰にも知られないようにひっそりと私たちの交際が始まった。とはいえ、恋人期間はたったの二カ月程度だったのだけれど。
『両親に見合いを勧められてうんざりしているんです。近い将来の結婚を前提に、お付き合いしていただけますか?』
両想いだったことに感激している最中にそう言われ、私は衝撃の連続だった。ただ付き合うだけじゃなく、まさか結婚前提の交際を申し込まれるとは。
当然、家柄の差やお互いの立場などを考えると、すぐに受け入れる勇気は出ない。しかし、断る選択肢を選ぶほうが困難だった。理由は至極簡単、彼以上の人はいないと断言できるほど好きになっていたからだ。
そして、結婚前提の交際は私にとって決して都合の悪い話ではなかった。
私が患う血管炎は、一度症状が治まっても数年後に再燃する可能性がある。再燃したら体調が優れない日々に逆戻りすることになるし、また治療を始めなければいけない。
そうなった時、万が一元カレのように桐人さんの気持ちが変わってしまったら? 彼に嫌われたら落ちるところまで落ちて、もう這い上がれないかもしれない。
でも結婚していれば、そう簡単に別れたりはできないはず。彼を手放したくないが故の思惑も、正直なところあったのだ。