冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 しばらくは内密に、という条件だけお願いして交際が始まり、同時に結婚に向けて動き出した。お互いの家族に挨拶をして認めてもらい、引っ越しの準備もして、本当にあっという間に婚姻届を提出するに至った。

 そうして夫婦になって約二カ月、まだキスしかしていないとはいえ、ちゃんと愛されていると感じて幸せだった。私も愛しているから結婚を決めたのは確かだけれど、その決断は時期尚早だったのだろうか──。


 初詣に行った翌日、東京の郊外にある実家に帰省した私は、カーペットの上に座って愛しのペットであるうさぎと遊びながら思いを巡らせていた。

 シェーレがある横浜までは電車で三十分くらいで、結婚する前は実家暮らしをしていたので家族に会うのはたいして久しぶりではない。それでもやっぱりお正月は顔を出そうと帰るのは決めていたのだが、桐人さんとのことについてひとりで少し考えたかったから、このタイミングはちょうどよかった。

 桐人さんは『俺もご挨拶に行こうと思ってたから、少しご家族に会わせてくれ』と、ここまで私を送るついでに家に上がっていってくれた。

 私の家族は大歓迎で、お茶菓子だけじゃなく漬物やら煮物やらたくさん並べてもてなしていた。食事も洗練されている八影家とはギャップがありすぎるけれど、桐人さんは終始柔らかな笑みを浮かべて楽しんでいたと思う。

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