冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
午後八時を過ぎた今は、彼との部屋ともまったく違う生活感ありまくりのこぢんまりとしたリビングダイニングで夕飯を食べ終わったところ。対面式のキッチンに立つ母、ダイニングテーブルにつく四歳年上の兄と父がまったりとテレビを見ている。
「桐人さん、もっとゆっくりしていってくれてよかったのにね~。うちの料理じゃ物足りなかったかしら」
「そりゃそうだろ。秋華が毎日同じようなもの作ってるんだから」
「いや、皐月。社長さんはきっと外でいいもの食べてるんだから、家に帰ってきて普通~の飯が出てきたらほっとするだろ」
お父さんに悪気がないのはわかるけれど、お兄ちゃんのほうは若干嫌みだな……。
口の端を引きつらせ、「田舎料理しか作れなくてすみませんねー」と棒読みで言う私の周りを、うさぎのやよいがくるくると走り回っている。
皐月、秋華、やよい。この名前を聞けば、命名した父が競馬好きだとわかる人にはわかるだろう。彼は競馬予想を適度に楽しみつつ、母と二人三脚で汗水流して農業を営んでいる。
兄の皐月は、この家族の中では異質な弁護士だ。突然変異でも起こってしまったかのような秀才なのだが、実はシェーレの顧問弁護士でもある。私が異動する前から引き受けていたので、桐人さんとは先に知り合っていたわけだ。
「桐人さん、もっとゆっくりしていってくれてよかったのにね~。うちの料理じゃ物足りなかったかしら」
「そりゃそうだろ。秋華が毎日同じようなもの作ってるんだから」
「いや、皐月。社長さんはきっと外でいいもの食べてるんだから、家に帰ってきて普通~の飯が出てきたらほっとするだろ」
お父さんに悪気がないのはわかるけれど、お兄ちゃんのほうは若干嫌みだな……。
口の端を引きつらせ、「田舎料理しか作れなくてすみませんねー」と棒読みで言う私の周りを、うさぎのやよいがくるくると走り回っている。
皐月、秋華、やよい。この名前を聞けば、命名した父が競馬好きだとわかる人にはわかるだろう。彼は競馬予想を適度に楽しみつつ、母と二人三脚で汗水流して農業を営んでいる。
兄の皐月は、この家族の中では異質な弁護士だ。突然変異でも起こってしまったかのような秀才なのだが、実はシェーレの顧問弁護士でもある。私が異動する前から引き受けていたので、桐人さんとは先に知り合っていたわけだ。